MtFの性別適合手術(SRS)は、身体と性自認の不一致による苦痛をやわらげ、自分らしく生きるための大切な医療です。手術によって「ようやく自分の身体に近づけた」と感じる方も多く、人生の大きな節目になることがあります。
一方で、初回手術が終わったあと、時間の経過とともに次のようなお悩みが出てくる方もいます。
- 腟が狭くなってきた
- ダイレーションが入りにくい
- 腟の深さが浅くなった
- 性交時に痛みがある
- 腟内に硬さや引きつれを感じる
- 外陰部の見た目が気になる
- 初回手術後の仕上がりに不安や違和感がある
こうしたお悩みは、とてもデリケートで、人に相談しにくいものです。
「自分のケアが悪かったのではないか」「もう治せないのではないか」と一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
しかし、SRS後の腟狭窄や腟の短縮、深さの低下は、決して珍しい問題ではありません。状態によっては、再造膣によって改善を目指せる場合があります。
ルックスクリニックでは、初回手術後の状態を丁寧に確認したうえで、患者様一人ひとりの身体の状態、ご希望、生活背景に合わせた修正手術の方法をご提案しています。
SRS後に起こる腟狭窄とは
腟狭窄とは、造腟後の腟が時間の経過とともに狭くなったり、硬くなったり、内部に瘢痕や癒着が生じたりする状態を指します。
症状としては、次のようなものがあります。
- ダイレーターが入りにくい
- ダイレーション時に強い痛みがある
- 腟の入口が狭くなった
- 奥まで入らなくなった
- 性交が難しい、または痛みがある
- 腟内に硬さや引きつれを感じる
腟狭窄は、術後のダイレーション不足だけが原因とは限りません。感染や炎症、体質による瘢痕形成、初回手術時の組織量、手術方法、術後の治癒過程など、さまざまな要因が関係します。
そのため、腟狭窄が起きたからといって、ご本人だけを責める必要はありません。大切なのは、現在の状態を正しく確認し、今からできる治療方法を検討することです。
腟が短い・深さが足りないと感じる場合
MtFの造腟術では、陰茎皮膚反転法や陰嚢皮膚移植法など、さまざまな方法が用いられてきました。これらは世界的にも広く行われている手術方法ですが、患者様によっては、初回手術後に腟の深さが十分に得られない場合があります。
特に、次のような方では、初回手術時に使用できる皮膚や組織の量が限られることがあります。
- ホルモン治療歴が長い
- 包茎手術・割礼などの既往がある
- もともとの外性器の組織量が少ない
- 過去に修正手術を受けている
- 術後に瘢痕や癒着が強く出ている
腟の深さが足りない場合、ダイレーションや性交に支障が出るだけでなく、「せっかく手術を受けたのに、思うように生活できない」という心理的なつらさにつながることもあります。
こうした場合には、現在の腟の深さ・幅・組織の状態を診察し、再造膣によって深さや機能の改善を目指せるかを判断します。
Peritoneal Revision Vaginoplasty(腹膜を用いた再造膣)
近年、SRS後の腟狭窄や腟が短い症例に対して、腹膜を利用した再造膣が選択肢の一つとして注目されています。
腹膜とは、お腹の中の臓器を覆っている薄く柔軟な膜のことです。
この腹膜を利用して腟の奥行きを補うことで、腟の深さの改善を目指す方法が、Peritoneal Revision Vaginoplastyです。
腹膜を用いる方法には、次のような特徴があります。
- 腟の深さを補いやすい
- 腟が短い症例に対応しやすい
- 組織に柔軟性がある
- 他の部位から大きく皮膚移植を行う必要性を減らせる場合がある
- 体表に新たな大きな傷跡を増やしにくい場合がある
ただし、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。
腹膜を用いる方法が適しているかどうかは、初回手術の方法、現在の腟の状態、瘢痕の程度、過去の手術歴、全身状態などを総合的に確認したうえで判断します。
修正手術が検討される主なケース
再造膣は、次のようなお悩みがある方に検討されることがあります。
- 初回SRS後に腟が狭くなった
- ダイレーションがうまくできない
- 腟の深さが浅くなった
- 腟の奥行きが足りない
- 瘢痕や癒着による痛みがある
- 性交時に痛みや違和感がある
- 過去に修正手術を受けたが、十分な改善が得られなかった
- 外陰部の見た目も含めて再度相談したい
修正手術は、初回手術よりも複雑になることがあります。
そのため、「どの術式が一番良いか」だけでなく、「今の身体にどの方法が安全で現実的か」を見極めることが重要です。
ルックスクリニックでは、患者様の希望を丁寧に伺いながら、医学的に可能なこと、難しいこと、リスク、術後ケアの必要性をできるだけ分かりやすくお伝えします。
初回手術が陰茎皮膚反転法だった方へ
初回手術で陰茎皮膚反転法を受けた方の中には、術後の経過とともに腟の深さや幅、腟内の柔軟性に悩む方がいます。
陰茎皮膚反転法は、世界的にも多く行われてきた標準的な造腟術の一つです。
一方で、使用できる皮膚量には個人差があり、術後の瘢痕形成や収縮によって、深さや広さが変化することがあります。
修正手術を検討する際には、次の点を確認します。
- 現在の腟の深さ
- 現在の腟の幅
- 腟内の瘢痕や硬さ
- 腟の入口の状態
- ダイレーションの可否
- 外陰部の形態
- 性生活に関する希望
- ご本人が最も改善したい点
再造膣では、全員に同じ方法を当てはめるのではなく、現在の状態に合わせた個別の治療計画が必要です。
手術前の評価で大切なこと
再造膣を安全に行うためには、手術前の評価がとても重要です。
可能であれば、初回手術の術式や手術記録、過去の修正手術の有無、術後トラブルの経過などを確認します。また、ホルモン治療の状況、持病、服薬内容、現在のダイレーション状況、今後の希望についても丁寧に確認します。
診察時に確認する主な内容は次の通りです。
- 初回手術の方法
- 手術を受けた時期
- 過去の手術記録
- 現在の腟の深さ・幅
- 痛みや出血の有無
- ダイレーションの頻度
- ホルモン治療の状況
- 持病や服薬内容
- ご本人の希望と優先順位
修正手術では、「深さを出したい」「痛みを減らしたい」「性交できるようになりたい」「外見も整えたい」など、患者様によって希望が異なります。
大切なのは、その希望を恥ずかしがらずに相談できる環境です。
ルックスクリニックでは、MtF当事者の方が安心してご相談いただけるよう、プライバシーに配慮しながら診察とカウンセリングを行います。
術後ケアとダイレーションの重要性
再造膣の結果を安定させるためには、手術そのものだけでなく、術後ケアが非常に大切です。
特に、腟の深さや幅を維持するためには、医師の指示に沿ったダイレーションが必要になります。
ダイレーションの頻度や期間は、手術方法や回復の状態によって異なるため、自己判断で中止したり、無理に進めたりせず、医師や看護師の指示に従うことが大切です。
術後には、次のようなケアが必要になります。
- 適切なダイレーション指導
- 創部のケア
- 定期的な診察
- 腟内の状態確認
- 感染や炎症のチェック
- 痛みや違和感への対応
- 必要に応じたホルモン管理
修正手術後は、初回手術後よりも慎重なケアが必要になる場合があります。
不安な症状がある場合は、一人で判断せず、早めに医療チームへ相談してください。
一人で悩まず、ご相談ください
SRS後の腟狭窄、腟が短い、深さが足りない、性交時の痛み、外陰部の見た目のお悩みは、とても相談しにくい内容です。
しかし、それらは「失敗だった」と決めつけるものでも、「もうどうにもならない」と諦めるものでもありません。
現在の状態を正しく評価し、適切な修正方法を検討することで、改善を目指せる可能性があります。
ルックスクリニックでは、MtFの性別適合手術だけでなく、SRS後の修正手術についても、患者様一人ひとりの状態に合わせた診療を行っています。
手術後の身体について不安がある方、他院で手術を受けたあとに修正を検討している方も、まずは現在の状態を確認することから始めてみてください。
あなたがこれからの生活をより安心して、自分らしく過ごせるように。
ルックスクリニックは、身体の機能面と見た目、そして心の不安にも配慮した医療を大切にしています。
まとめ
SRS後に起こる腟狭窄、腟の短縮、深さの低下、痛み、外陰部の見た目の悩みは、時間が経ってから現れることもあります。
再造膣では、現在の腟の状態、初回手術の方法、瘢痕や癒着の程度、ご本人の希望を総合的に確認し、適した方法を検討します。
腹膜を用いたPeritoneal Revision Vaginoplastyは、腟の深さを補う方法の一つとして、腟が短い方や重度の狭窄がある方に検討されることがあります。
ただし、修正手術は初回手術よりも複雑になることがあるため、事前の診察、十分な説明、術後ケアの継続がとても重要です。国際的なトランスジェンダー医療の基準としてWPATH SOC8が参照されることもあり、同基準ではトランスジェンダーおよびジェンダー多様な人々への医療に関するケア基準が示されています。
SRS後のことで悩んでいる方は、どうか一人で抱え込まないでください。
今の状態を知ることが、次の選択肢を見つける第一歩になります。
再造膣・外性器修正の費用例
S字結腸法(開腹)による再造膣手術のお見積もり総額※1(21日間滞在)
また、「手術費用」には、術前検査費用・GID診断書取得費用(必要な場合)・入院費用を含みます。
ただし、渡航前検診の費用、渡航の際の日本国内の移動費、滞在中の食費などは含みません。
※ 手術関連費用・アテンド料金および滞在費用はバーツ建てでの精算となります。
- 最終的なお見積もりは弊社へのご予約時となり、上記内訳とは異なる場合があります。実際の金額は精算日の為替レートおよび航空券手配後に決まります。手術料金・各種費用が改定の際は、追加料金が発生する場合があります。
- 滞在は約21日間、入院は約8日となります。
S字結腸法(腹腔鏡)による再造膣手術のお見積もり総額※1(21日間滞在)
また、「手術費用」には、術前検査費用・GID診断書取得費用(必要な場合)・入院費用を含みます。
ただし、渡航前検診の費用、渡航の際の日本国内の移動費、滞在中の食費などは含みません。
※ 手術関連費用・アテンド料金および滞在費用はバーツ建てでの精算となります。
- 最終的なお見積もりは弊社へのご予約時となり、上記内訳とは異なる場合があります。実際の金額は精算日の為替レートおよび航空券手配後に決まります。手術料金・各種費用が改定の際は、追加料金が発生する場合があります。
- 滞在は約21日間、入院は約8日となります。
外性器修正手術のお見積もり総額※1(12日間滞在)
また、「手術費用」には、術前検査費用・GID診断書取得費用(必要な場合)・入院費用を含みます。
ただし、渡航前検診の費用、渡航の際の日本国内の移動費、滞在中の食費などは含みません。
※ 手術関連費用・アテンド料金および滞在費用はバーツ建てでの精算となります。
- 最終的なお見積もりは弊社へのご予約時となり、上記内訳とは異なる場合があります。実際の金額は精算日の為替レートおよび航空券手配後に決まります。手術料金・各種費用が改定の際は、追加料金が発生する場合があります。
- 滞在は約12日間、入院は約1日となります。
再造膣・外性器修正に必要な条件
再造膣・外性器修正には、主に以下の条件を満たしている必要があります。
- 既に性別適合手術(陰茎切除や陰嚢切除でない)を済ませている事。
- HIV陰性である事。
- 渡航前検診票
- 体重90kg以上の肥満でない事。
- 手術可否確認の為の患部写真(日本国内で造膣なしSRSを受けた方は、外性器修正に必要な皮膚が不足する可能性が高くなります)